風の秋

いつまで続くのだろうか、この暑さはと思いながら、いつしかツバメの群れ飛ぶ姿は無く、朝晩は過ごしやすい季節になった。我家の庭の花々も次々と主役を変えて、今はホトトギスやシュウカイドウ、ヤブランなどが精一杯に咲いている。背筋をぴんと伸ばしてシュウメイギクが出番を待っている。秋は密かにやってくる。春が光とともに訪れるなら、秋は風とともにやってくる。

日本は古来より自然の移ろいの美しさを愛でてきた。雪月花、花鳥風月などは四季の変化の美しさを端的に表している。四季を彩る様々な花、季節を告げ、心をなごませ、心を豊かにする花の美しさ。月は日々形を変え、日ごとに満ち、また欠けていく。月の光が照らす景色もまた、日ごとに変化する。風は目に見えないものを連れてくる。雪の降った日は地上を完璧に変える。はっきりとした四季を持った国に育ったわたし達は、自然の変化を楽しむ心をもった民族である。

自然の移ろいの中に、人生を感じ、人の成長を月の満ち欠けの中にみる。形あるものはいつしか壊れ、出会いがあればいつの日か別れが待っている。別れたといえども、また季節は巡り、新たな出会いが待っている。明けない夜は無い。苦しみもずっと続くわけではなく、喜びもまた永遠に続きはしない。

「袖すれあうも他生の縁」出会いは偶然であるがまた、必然を感じるときもある。それぞれたどってきた道だが、ある時、ある場所で、出会った。そこで何事も無くすれ違ったのか、袖すりあって、一言三言、会話が交わされ、時によっては人生を変える出会いとなる。誠に人生は、時を歩む旅であり、わたし達は時を歩む旅人である。そして、時は自然の移ろいそのものであると思う。

美しい日本の、美しい四季の変化の中で、美しい生き方をしたいものだと思う。